第8回 新規資料の収集・保存
博物館施設の基本的なお仕事として資料収集があります。
恐竜の化石、土器、大昔の農耕器具、戦国武将の甲冑、昆虫の標本、美術作品…と、対象になる資料は施設の性格によってさまざまですが、うちの場合は吉野作造にまつわるもの。特に原稿や手紙など吉野作造直筆の資料は欠かせません。
吉野作造の直筆原稿や手紙は、今でも年に2~3点ほどのペースで新しいものが見つかります。頼りになるのは老舗の古書店の商品目録です。
最近入手したのは、吉野作造の自筆原稿「小弱者の意気―日本と朝鮮との交渉に関する研究の三」、「現今労働運動に対する私の立場」の2つ。「小弱者の…」は1921年(大正10)8月に、「現今労働…」は1922年(大正11)4月に、いずれも雑誌『文化生活』に掲載されました。2つとも『吉野作造選集』(岩波書店)に収録されているよく知られた論説ですが、原稿が出てくるのは初めてです。
資料を入手した後は、下の写真のようなデジタル記録を作ります(コラム用に画像を粗くしています)。デジタル記録の作り方は、施設や資料の性格によって様々ですが、記念館ではこんな感じです。
下は「現今労働運動に対する私の立場」の1枚目。朱字は編集者によるものと思われる書き込み。文中には吉野による校正の跡が見られます。

古い文書は傷みが激しいものもありますが、デジタル記録を作成すれば直接現物に手を触れなくても内容、枚数、大きさなどを確認できるようになります。
デジタル記録を作ったら、資料名・内容・収蔵日・どこから購入したか.などをラベリングし、所蔵資料として登録、保存状態(劣化の程度)などを考えて適当な方法で収蔵庫に保存します。あとは企画展に出したり、研究者の方の閲覧に供したりなどなど…。
記念館の所蔵資料は、『吉野作造記念館所蔵資料目録』で確認できます。ただ、この数年の新規収蔵資料は含まれていませんので、遠からず内容を更新したものを出さなければなりません。そこまでいけばとりあえずゴール…という感じでしょうか。